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Lee-Byung-hun addicted

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第6話

『Night and Day』 scene 6 

その夜。
ビョンホンから揺のPCにメールが届いた。

親愛なる揺へ

君と別れてからまだ数時間しか経っていないね。
君はどんな夜を迎えているのだろうか。
僕はこの数日間のことをいろいろ考えていた。
そして君がアフリカに旅立つ前にどうしても伝えたいことがあってメールすることにした。
とても電話では話せそうにないから。
この数日間は終わってみれば僕にとってあっという間の出来事だった。
あんなに迷って悩んでいた東京ドームのイベントもみんなのおかげで無事終えることが出来た。
多くのファンの人が喜んでくれたことが今になっても伝わってきてとても嬉しい。
勇気を出してやってよかったと心から思っている。
そして数日後新しい映画がクランクインする。
ドームに来られなかったファンのためにもちろん来てくれたファンのためにそして自分のために満足できるいい作品にしたいと思っている。
僕の選んだ仕事はそういう仕事でそして僕は今その仕事を誇りに思い人生のすべてを賭けるに値する仕事だと確信している。
そしてそんな仕事を僕に与えてくれた神様に感謝しているんだ。

そして今、この数日間の僕を振り返っている。
すまない。揺。先に謝っておくよ。
僕はこの数日間僕の中に君の居場所を作ってあげることができなかった。
正直、君と会っていても、話をしていても上の空だった。
そしてたぶんこれからも僕がこの仕事を続けている限りそれは変わらない。
君と出会ったのは昨年の夏だったね。
僕にとっては自分を自由に出来る一番いい時期だったのかも知れない。
僕はこの半年、君を全身全霊で愛してきた。
そしてこれからもずっとそうしていけると思っていた。
でも一旦厳しい仕事に入ると自分で思っていた以上にのめりこんでしまって君の事を気にかける余裕が全くないことに気がついた。
もしかしたら今までの恋でもそうだったかもしれない。
でも、今度は違うと信じていた。
こんなにも僕の中で大きい存在の君を思い出せないなんて、いい加減自分の不器用さに嫌気が差しているんだ。
だから、アフリカに行っている三ヶ月の間に君にはもう一度考えてほしい。
こんな自分勝手な僕を許せるのか。
いつも待たせるばかりの僕を待つ人生で本当にいいのか。
僕は君にどうしても幸せになってほしい。
そのためなら僕の我がままは諦める覚悟は出来ているから君の好きな道を選んでくれ。
答えは三ヵ月後に聞くことにする。
仕事元気でがんばれよ。
                            イ・ビョンホン

「イ・ビョンホンね・・・・・。本当に不器用なんだから。」
揺はくすっと笑った。そして無償に彼に会いたくなって抱きしめたくなった。
そして翌日。朝一番の飛行機で彼女はソウルに旅立った。



彼女に残された日にちは三日間。
アフリカに行く準備も残っているから一泊二日がいいところだった。
連絡せずに仁川空港に降り立った揺はまっすぐビョンホンの家に向かった。
「やっぱり何かあったの?あの子の様子がちょっとおかしかったから。」
訪ねてきた彼女を見てオモニは優しくそういった。
「すいません。ご心配かけて。相変わらず私たちまたすれ違ってしまったみたいで。」
「揺ちゃんだってアフリカ行きの準備で大変でしょ。」
「でも、こっちはもっと大変ですから。何とかします。それで今日彼は・・・」
「ちょっと打ち合わせがあって出かけてるけど遅くはならないって言ってたわ。」
「そうですか・・・」
浮かない顔の揺をオモニは畑に誘った。

「わ~~~っ。いっぱいなってる~」
見事に手入れされた畑を眺めながら揺は嬉しそうにそう叫んだ。
「ほら、揺ちゃんこれ、食べてみる?」
オモニは揺に真っ赤になったトマトを差し出した。
「えっ、いいんですか?わあ~嬉しい。」
揺は嬉しそうに袖でトマトを拭くと豪快に一口噛み付いた。
「美味し~い。すごく濃い味がしますね。すごい懐かしい気がします。」
彼女は美味しそうにかぶりつきながら嬉しそうに笑った。
「じゃあ、今夜は焼肉食べましょうか。揺ちゃんそこのサンチュ収穫してくれる?」
「はい。いやぁ~お母さんのキムチと一緒に焼肉食べられるなんて無理してきた甲斐がありました。」
「ちょっとは元気になった?」
「ありがとうございます。私は大丈夫です。実は・・」
「揺ちゃん」
「はい?」
「何でも全部話さなくてもいいのよ。困ったときに相談には乗るけど。今度は貴方の気持ちはしっかり決まっているみたいだから私は安心しているから。だっていちいち全部話すの面倒でしょ?」
オモニはそういうとにっこりと笑った。
私はこの人に何度助けてもらっているのだろう。
揺はオモニの笑顔をみてとても安心しすべてがうまくいく気がしていた。

その夜、帰ってきたウニとオモニと揺の三人は焼肉の用意をしてビョンホンを待っていた。
「遅くない。お兄ちゃん。さっきから何回も携帯に連絡してるのに出ないし」ウニがふてくされたように言った。
「みんなお腹すいたでしょ。仕方ない、先に食べましょ。」とオモニ。
「でも・・・」揺は心配そうに言った。
「そうよ。オンニ。いつ帰ってくるかわからない人待って食事してたら太っちゃうわよ。食べよう食べよう。」
「ねえ、オンニ。マッコルリ飲もうか。」
ウニに誘われるまま揺もオモニも早いピッチでグラスを開けていった。
いつのまにか三人はすっかり酔っていた。
「・・・でね。お母さんもウニちゃんも聞いてくださいよ。彼ったら私がこんなに好きなのに別れようなんて言うんですよ。しかも理由が幸せに出来ないかも知れないからだって。信じられます?そんな理由。私が幸せかどうかは私が決めることだと思いません?」
「そうだそうだ!オンニが正しい!」とウニ。
「そう。揺ちゃん。その通り!」
オモニまでいつになくハイテンションだった。
「でしょでしょ。全くミンチョルじゃあるまいし。幸せはしてもらうものじゃなくて二人で作るものでしょ。ねっ!そう思いません?」
揺はグラスを持ったまま立ち上がりそう演説をして二人の方を振り返った。
「あ・・・・・・・」
「何・・・・やってるの」
リビングの入り口に佇んだビョンホンは一言そういった。





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